企業サイトのWordPressリニューアル費用と進め方
この記事はこんな人におすすめ
- 会社のコーポレートサイトをWordPressでリニューアルしたいが、費用相場と工期の目安が知りたい
- CMS移行・デザイン刷新・301リダイレクト・GA4やタグの引き継ぎなど、やることを整理したい
- RFP(提案依頼書)の作り方や、見積り比較の基準、ステークホルダー調整のコツを押さえたい
WordPressレベル別 読みどころガイド
赤:外注依存度「高」 オレンジ:外注依存度「中」 緑:外注依存度「低」
右のレベル表(スマホは画面下)を参考に、記事内の「赤・オレンジ・緑」のパートを読み分けてください。
※「外注依存度」とは、作業や確認を自分でどこまで対応するか、もしくは外注に任せるかの度合いを示しています。
企業サイトのWordPressリニューアルに関する基本
企業サイトのリニューアルは、見た目の刷新だけでなく「情報設計」「移行計画」「計測継承」「ガバナンス対応」の4本柱で成功が決まります。
費用は、要件の明確さ・ページ数・データ移行量・承認フローの複雑さで大きく変動。まずは目的(採用強化/商談創出/ブランディング)とKPIを固め、範囲を段階化するのがコツです。
WordPressレベルごとの確認ポイント
「目的・範囲・期日・体制」だけは先に決める
社内にWeb担当がいない/少人数で運用している赤レベルの方は、要件定義から制作・移行・運用設計まで一括で依頼して問題ありません。大事なのは、意思決定を速くするための「目的・優先KPI・スケジュール・承認フロー」の4点を先に合意することです。
よくある失敗は、デザイン先行で要件が後追いになるパターンです。この場合は、公開直前に要件が増えて費用と納期が膨らみます。
まずは段階分け(Phase1:必要最低限/Phase2:回遊改善/Phase3:多言語やMA連携)でロードマップを引きましょう。
確認ポイント
- 経営の目的とKPI(例:問い合わせ月◯件、採用応募◯件、資料DL◯件)を1~2行で定義
- スコープの枠:対象ページ数、CMS移行の有無、ブログ/ニュースの扱い、画像差し替え範囲
- 承認プロセス:誰が何を承認するか、締切、決裁者の出席タイミング
- 公開期限:展示会や採用開始など日付ドリブンの制約は最初に共有
- 社内体制:原稿執筆者、写真素材の用意、問い合わせ対応の担当
費用の目安
- 小~中規模(15~40P、テンプレ中心):100~300万円
- フルデザイン+テンプレ拡張+移行設計(30~80P):200~500万円
- 急ぎ案件(2~3か月)や多部署合議は、管理工数で1.2~1.5倍に振れやすい
準備
- ブランドガイドライン(ロゴ・色・トーン&マナー)と禁止表現
- 参考サイト3つ(良い例/避けたい例)と、その理由
- 既存サイトのアクセス権、ドメイン・サーバー情報(レジストラ、DNS、WAF有無)
- 現行のGA4/広告タグ/計測イベントの一覧、問い合わせ種別とSLA
RFPとサイトマップを用意。調査費と実装費を切り分けて依頼
Web運用の経験があるオレンジレベルの方は、RFP(提案依頼書)とサイトマップ+主要画面のワイヤーを先出しすると、見積のブレが激減します。SEO観点では、旧URL→新URLの301リダイレクト設計と、構造化データ(FAQ/Article/Organization)、Core Web Vitals(LCP/INP/CLS)改善の方針を明記しておくと良いです。
データ移行については、「自動移行」「半自動+目視」「フル新規作成」でコストが大幅に変わるため、移行粒度の定義を忘れずにしましょう。
確認ポイント
- サイト構成:トップ/事業/製品・サービス/事例/採用/ニュース/会社情報/法定表示
- 移行範囲:固定ページ本文、カスタム投稿(事例・ニュース等)、メディア、ALT、メタ情報
- 非機能:パフォーマンス、アクセシビリティ(WCAG準拠レベル)、運用権限(編集者/寄稿者)
- セキュリティ:WAF、二段階認証、脆弱性対応のSLA、バックアップ/リストア手順
- 検収:ブラウザ表、端末範囲、テストケース(フォーム/検索/会員/PDF/多言語)
費用の目安
- 戦略/要件定義(ワークショップ×2~4回):30~120万円
- 制作・実装(30~80P、カスタム投稿/ACF/ブロック拡張):250~800万円
- 移行作業(自動+目視校正):20~200万円(記事量と品質要件で大きく変動)
- 運用設計(権限/ワークフロー/マニュアル/教育):15~80万円
準備
- RFP雛形:目的/KPI/スコープ/非機能/体制/スケジュール/成果物/除外範囲
- 遷移図(サイトマップ)と主要ページのワイヤーフレーム(FigmaやMiroでOK)
- 旧→新URL対応表のたたき台、サーチコンソールの権限
- タグ移管方針(GTM設計/イベント命名規則/コンバージョン定義)
設計・移行・運用を分離し、TCOで最適化
緑レベルの方は、情報設計/デザイン/フロント/バックエンド/移行/運用を分離発注することでTCOを最適化します。
Git運用、PRレビュー、E2Eテスト(Playwright等)を前提に、受入基準(DoD)と計測KPIを仕様化。WPコア/プラグインのバージョンポリシー、CI/CD(GitHub Actions等)、画像最適化、キャッシュ/OPcache、検索(WP_Query調整やAlgolia連携)まで定義して入札します。
確認ポイント
- ブロックエディタの拡張方針(カスタムブロック/パターン/ACF Blocks)と編集ガイド
- データ移行の自動化(WP-CLI/REST API/CSV)、差分適用のロールバック計画
- SEO/計測:CWV改善、構造化データ、ログ基盤(BigQuery等)、可観測性(Uptime/エラートラッキング)
- セキュリティ/権限:最小権限、審査ログ、監査証跡、脆弱性アラート運用
- SLA:稼働率・初動・復旧時間、バックアップRPO/RTOの明記
費用の目安
- UI/UX設計(UX調査/プロトタイプ検証):80~300万円
- 開発・実装(要件確定、多機能/多言語/ヘッドレス等):300万円~
- 移行自動化+品質保証(テスト/監視/計測):100万円~
- 運用・保守(月額、体制次第):5~50万円
準備
- 技術要件書(インフラ/CI/CD/監視/セキュリティ)、DoD/DoRテンプレ、PRD
- リポジトリ、環境変数管理、ステージング/本番の切替ポリシー
- KPIダッシュボード要件(CV/回遊/CWV/採用KPI)と改善サイクル
制作代行の依頼フロー(一般的な流れ)
- 現状分析と目的/KPIの言語化(課題・成功基準・期日・体制を1枚に集約)
- RFPとサイトマップ作成(非機能/移行/計測/セキュリティ/承認フローを明記)
- 相見積もりと比較(作業内訳・前提条件・除外範囲・検収範囲・SLA・保守)
- 要件定義/情報設計→デザイン→実装→ステージング検証(差分記録・E2E・負荷/速度)
- 移行/301設計→本番反映→計測確認(CV/イベント/検索流入)→運用開始
※ 迷ったら、Phase1で公開→Phase2で回遊・CV改善→Phase3で拡張、の段階設計をおすすめします。
企業サイトのリニューアルに関するよくある質問
公開後に検索順位が落ちないようにするには?
旧→新URLの301リダイレクトと、タイトル/見出し/本文の意図を保つ情報設計が重要です。公開直後は巡回頻度が上がるため、サーチコンソールのエラー監視とサイトマップ送信を忘れずに。
社内承認が多く進まない…どう進行管理すべき?
承認者の「出番」を明確化します。要件=経営・マーケ、デザイン=広報、セキュリティ=情シスなど、チェック観点ごとに締切を設定。週次定例と議事録テンプレで合意形成を早めます。
既存記事は全部移行すべき?
全移行はコスト高。価値ある記事(流入/被リンク/CV寄与)を優先し、重複・陳腐化・低品質は統合や非公開も検討。移行後は内部リンクと関連コンテンツの再設計が効果的です。
テーマとプラグインはどう選べば安全?
更新頻度・サポート体制・脆弱性履歴・相性(PHP/WPバージョン)・不要機能の少なさで評価。長期運用なら、子テーマ前提で必要機能だけを積む方が安定します。
WordPressリニューアルの成否は、見た目よりも「設計と移行」にあります。目的とKPIを先に決め、301・計測・体制・セキュリティまで含めた仕様で進めると、手戻りと無駄な費用を抑えられます。
赤は目的/KPIと期日を明確化、オレンジはRFP/サイトマップで見積精度を上げ、緑はDoD/CI/CDと移行自動化で品質とTCOを最適化が基本の視点です。
段階公開でスピードと品質を両立しつつ、公開後30日間は計測と微修正のサイクルを回すと成果が安定します。まずは現状とゴールを1枚にまとめ、相見積もりからスタートしましょう。

