WordPress運用を外注するときの契約形態と注意点

この記事はこんな人向けです
  • WordPress運用代行(保守・更新)を外注したいけど、契約の種類や相場がわからない
  • 委託契約・準委任契約・請負契約の違いと、リスクを最小化するポイントを知りたい
  • 解約時の引き継ぎや権限管理、SLA(品質)・対応範囲の線引きを明確にして運用したい

WordPressレベル別 対応難易度

Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7
レベル判断は、右のレベル表(スマホは画面下)を参考にしてください。

赤:外注推奨 オレンジ:条件付き自力可 緑:自力対応可

WordPress運用を外注するときの全体像と対応方針

WordPressの運用・保守は、契約形態の選び方と責任分界点の明確化で品質が決まります。
小さな更新でも、SLA/SLOや対応範囲、権限設計、解約・引き継ぎ条件を事前に決めておくとトラブルを大幅に回避できます。
自分のスキルと体制に合わせて、レベル別の方針で無理なく進めましょう。

WordPress運用 ~レベルごとのおすすめ対応

「契約の型」と「責任の線引き」を設計してもらう

運用・保守の初学者~担当兼任で忙しい人は、契約形態の選定と基本書式(NDA/業務委託契約/SLA)をベンダーに提案してもらうのが安心です。
特に、準委任契約(時間やタスクの対価)請負契約(成果物の完成責任)の違いは誤解しがちです。日々の軽微な更新や監視・バックアップは準委任、特定の制作や機能追加は請負、と分ける案が王道です。

  • SLA/SLO:稼働時間帯、一次応答・復旧目安、緊急時の割増や連絡手段(電話/チャットなど)の明記
  • 対応範囲:「WordPressコア/プラグイン更新」「障害一次対応」「軽微改修/コンテンツ更新」「保守外(新規機能・大幅改修)」を仕分け
  • 責任分界点:サーバー(ホスティング)障害・CDN・WAF・メール配信等はどこまで面倒をみるかを明確化
  • 権限設計:管理者(Administrator)乱発はNG。投稿者/編集者等のロール運用、2FA、共有アカウント禁止
  • 費用構造:月額基本+スポット/超過、緊急・深夜対応の料率、追加見積りの発生条件

「全部お任せ」のまま走り出すと、解約時の引き継ぎバックアップ/コード資産の所在で揉めることがあります。
少しでも後悔をなくすためにも、予め契約に引き継ぎ資料・エクスポート(設定/コード/手順)を含めましょう。

基本のドラフトは自分、レビューと運用実装は外注

WPを日常運用できる緑レベルの方なら、契約ドラフト(準委任の想定/SLA草案/対応範囲表)を自分で準備し、ベンダーに実務目線でレビューしてもらう体制がおすすめ。
タスク管理・監視・定期メンテ(コア/プラグイン/テーマ更新)・障害一次切り分けなど、標準運用手順(SOP)をテンプレ化しておくと運用が回りやすくなります。

  • 変更管理(Change Management):本番反映の承認フロー、バックアウト手順、更新ウィンドウの固定
  • セキュリティ:脆弱性情報の監視(プラグイン更新の優先順位)、アカウント棚卸し、ログ監査
  • 可観測性:死活監視・速度計測(Core Web Vitals)・エラーログの定期レビュー
  • レポート:月次で「稼働時間/インシデント/対応工数/改善提案」をサマリー化
  • 費用最適化:月額保守に含む範囲とスポットの線引き、改修の見積りテンプレ、購買稟議用の説明資料

制作寄りの請負案件(LP追加、機能開発)は、検収基準・受け入れテスト観点(表示・動作・トラッキング)を明記します。
準委任との併用時は、日程・担当・優先度の取り合いが起きやすいので、カンバン/バックログ運用で透明化すると衝突が減ります。

契約は主導で設計し、運用一式を「仕組み化」して委託

技術・法務・運用の理解がある緑レベルの方なら、マスター契約+個別契約で統治し、SLA/SLO/責任分界点/セキュリティ要件/BCPを自社標準に沿って定義するのが理想です。

  • 法務条項:NDA、再委託可否、源泉・支払サイト、瑕疵担保/保証、著作権/利用許諾、成果物のソース開示
  • 運用条項:優先度別SLA、エスカレーション経路、インシデント後レビュー、RCA(原因分析)提出
  • 可搬性:ロックイン回避(インフラ/テーマ/プラグインの選定方針、引き継ぎ用ドキュメントの形式)
  • 権限と監査:最小権限の原則、2FA必須、共有ID禁止、監査ログ保全、退職・契約終了時のアカウント無効化手順
  • リスク配分:CDN/メール/WAF/外部API等のSLA連鎖、不可抗力条項、災害時の代替運用

監視とデプロイはCI/CD・Infrastructure as Codeに寄せ、変更履歴を可視化。
保守内・保守外の境界はRACIで明文化し、四半期ごとにSLA改定する運用が理想です。

WordPress運用を外注する場合のポイント

ここでは、実務で揉めやすい「お金・進め方・事前準備」を先に押さえます。

項目ポイント
費用の目安 ・月額保守(準委任):小規模で1~3万円/月、中規模で3~10万円/月(監視・更新・軽微改修を含むことが多い)
・スポット対応:5,000~50,000円程度(障害一次対応/復旧、更新代行など)
・制作・機能開発(請負):要件次第で個別見積。検収と保証期間の範囲を明記
・緊急・夜間/休日:通常の1.25~2.0倍などの料率を設定するケースが一般的
依頼の流れ 1. 要件整理(現状の課題・ゴール・予算・体制・権限)
2. RFP/依頼書送付 → 見積・提案受領(契約形態・SLA案・対応範囲表)
3. NDA締結 → 検証環境共有 → トライアル期間の設定(1~3か月)
4. 本契約締結 → 運用開始(月次レポート・定例・改善提案)
5. 四半期レビューでSLA/範囲・料金の見直し
準備しておくと便利 ・サイト構成図、プラグイン一覧、テーマ名(子テーマの有無)、カスタムの概略
・サーバー情報(ホスト/PHPバージョン/バックアップ仕様/WAF/CDN有無)
・権限テーブル(誰が何ロールか)と二要素認証の状況
・監視・計測の現状(死活・エラーログ・速度・CV計測の可否)
・引き継ぎ希望物(設定エクスポート、コード、運用手順、連絡網)
契約で特に明記したい事項
  • 対応範囲と除外事項(制作は請負へ、運用は準委任へ振り分け)
  • SLA/SLO(一次応答/復旧、報告方法、重大度定義)
  • 責任分界点(ホスティング/ドメイン/DNS/CDN/外部APIの扱い)
  • セキュリティ要件(2FA、共有アカウント禁止、ログ保全、再委託条件)
  • 著作権・成果物(ソースの帰属/利用許諾、納品形式、検収基準、保証期間)
  • 解約・引き継ぎ(データ一式の提供、アカウント無効化、ドキュメント整備)
  • 費用と支払サイト(超過工数の算定、深夜・緊急料率、見積り起点)
まとめ

WordPress運用の外注は、契約形態のミスマッチ責任分界の曖昧さがトラブルの主因です。小さな運用でも、SLA・範囲・権限・引き継ぎを先に決めれば安心して任せられます。

は設計から外注、オレンジは自社ドラフト+外注レビュー、は自社標準で統治で進められるのが理想です。

「費用」「対応範囲」「解約後の資産」を見える化し、四半期ごとに見直す運用で、品質とコストのバランスを取りましょう。

  • Lv1 初心者 初心者 … ログインなど基本も不安
  • Lv2 基本操作 基本操作 … 投稿OK/更新は不安
  • Lv3 投稿メイン 投稿メイン … 記事更新・差替えはできる
  • Lv4 更新ユーザー 更新ユーザー … テーマ/プラグイン更新経験あり
  • Lv5 データ操作 データ操作 … DBやバックアップを理解
  • Lv6 カスタマイザー カスタマイザー … 子テーマ・CSS修正が可能
  • Lv7 マスター マスター … コード/サーバーまで自走可能