保守代行サービスでカバーされる範囲/されない範囲

この記事はこんな人向けです
  • 「保守代行ってどこまでやってくれるの?」と対応範囲の線引きを知りたい
  • 更新・セキュリティ・バックアップ・軽微改修などの役割分担を明確にしたい
  • 契約前に費用感や依頼フロー、準備すべき情報を把握しておきたい

WordPressレベル別 対応難易度

Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7
レベル判断は、右のレベル表(スマホは画面下)を参考にしてください。

赤:外注推奨 オレンジ:条件付き自力可 緑:自力対応可

WordPress保守代行の全体像と対応方針

保守代行サービスは、日々の更新や脆弱性対応、バックアップ運用など「サイトを安全に走らせ続ける」ための定常タスクを中心にカバーします。
一方で、新機能の追加や大規模テーマ改修、広告運用やSEO戦略の立案などは対象外になりがちです。
契約前に「どこまでが保守」「どこからが制作・運用改善(別費用)」なのか、線引きをハッキリさせておくことで後のトラブルを防げます。

保守代行サービス ~WordPressレベルごとのおすすめ対応

対象・非対象の線引きを覚える

はじめて保守を頼む人や、運用がまだ整っていない赤レベルの方は、「安全に維持するための基本セット」を保守代行に任せるのが安心です。一般的にカバーされやすいのは次のような定常タスクです。

● カバーされることが多い例(定常・予防)
・WordPress/テーマ/プラグインのバージョン管理(互換性チェックを含む軽微な更新)
・脆弱性情報のモニタリングと迅速なアップデート提案
・自動/手動バックアップの設計・取得・復元テスト(頻度・保管期間の取り決め)
・稼働監視(死活監視・改ざん検知・ログ監視の初期設定と軽微な調整)
・フォーム送信やメール配信の簡易不具合チェック(認証周り・スパム対策の初歩設定)
・キャッシュ/画像圧縮などの基本パフォーマンス調整(プラグインレベルの範囲)
・軽微な表示崩れ・文言修正・CSS微調整(所定工数内)

● カバーされない/別途見積もりになりがちな例
・新機能開発、テンプレ設計の刷新、フルリデザインなどの制作・開発
・EC機能拡張、決済連携の新規導入、会員システムの新規構築
・大規模トラブル対応(DB修復、マルウェア除去、サーバー移行を伴う復旧)
・継続的なSEOコンサルや広告運用、コンテンツ戦略の立案・実行
・他社SaaSとのカスタム連携(API実装)や特殊要件のサーバー設定

最初にやるべきは、SLA(対応時間帯・初動時間)/バックアップ方針/アップデート方針/軽微改修の定義を紙に落とすこと。曖昧なまま契約すると「これは保守?別途制作?」で意見が食い違うことが多いです。基本セットの枠を決め、越えるものは都度見積もりに分ける発想が大切です。

「とりあえず壊れなければOK」というレベルなら、毎月の保守内で“壊れにくくする仕組み”を作ることに全振りしましょう。結果的にトラブル対応コストも下がります。

運用効率とリスクのバランス調整

ある程度WordPressに慣れているなら、更新・バックアップ・監視ルールの一部を自社で回しつつ、判断が難しい箇所だけ保守代行に委ねる、いわば“ハイブリッド運用”が相性良くおすすめです。

・マイナーアップデートは自力、メジャーアップデートやPHP更新は保守に相談
・定期バックアップは自動、自動復元テストは四半期に一度、結果を共有
・軽微改修(CSSの数行・文言差し替え)は社内、レイアウト影響が出る改修は保守へ
・フォーム不達やスパム急増などは一次切り分け後、保守にエスカレーション

「軽微改修」の定義は契約の肝です。例えば「~30分または~1時間まで/月◯回まで」はよくある線引きです。超えるものはチケット制や都度見積もりになります。ここを曖昧にすると、保守のつもりが制作の恒常対応になり、双方の負荷が破綻します。

また、「不可抗力」や「外部サービス起因」の扱いにも注意です。CDNやメールサーバー、システムや外部APIの障害は、保守側で原因究明に協力しても、その修正は保証対象外になるケースが多いです。SLA上は「調査・暫定回避策の提示」までが保守、恒久対応は別タスクになりやすい、ということを理解しておきましょう。

保守を仕組みとして運用する

サーバーやCI/CD、監視基盤まで触れる緑レベルの方なら、保守=運用プロセスの継続改善として設計できます。ポイントは、SLO/SLA・運用Runbook・変更管理の3点。

・SLO/SLA:応答時間や初動水準、サポート時間、対象イベント(セキュリティ・可用性・性能)の優先度を合意
・Runbook:障害時の手順、ロールバック方針、責任分界点(WP/テーマ/プラグイン/インフラ/外部SaaS)を明記
・変更管理:ステージング運用、リリースウィンドウ、影響範囲の定義、バックアウト手順、監査ログの保全

このレベルになると、保守内で完結する領域(更新・脆弱性対応・日常監視)と、別契約の領域(開発・大規模最適化・SEO/広告運用)の境界をドキュメントで常時アップデートしていくのが定石。ステークホルダー全員が同じ図を見られる状態を作ると、依頼の早さも失注リスクも段違いで下がります。

保守を外注する場合のポイント

契約前に、「対象イベント」「軽微改修の定義」「初動時間と対応時間」「バックアップと復元テスト」の4点だけは必ず言語化しましょう。ここが固まれば、ほとんどの齟齬は避けられます。

項目ポイント
費用の目安 ・定常ケア中心:月5,000~15,000円 目安
・監視+軽微改修:月20,000~50,000円 目安
・SLA厳しめ・一次障害対応:月50,000円~+都度チケット
・大規模障害/開発案件は別見積もり(時間単価・成果物単価いずれか)
依頼の流れ 1. 現状ヒアリング(運用体制・課題・既存プラグイン/テーマ構成)
2. 基本設計の合意(SLA・バックアップ・軽微改修の定義・連絡経路)
3. 初期整備(更新整理・バックアップ設計・監視設定・不要プラグイン棚卸し)
4. 月次運用(定常タスク+チケット制でスポット対応)/四半期レビュー(改善)
準備しておくと便利 ・管理画面/サーバーのログイン権限(監査ログが残る権限設計だと尚良し)
・プラグイン一覧・テーマ名・バージョン・有効/無効のメモ
・バックアップの有無・保存先・保持期間・復元テスト履歴
・直近の不具合/やりたい改善の優先度表(P1/P2/P3 でOK)

なお、「保守内と思っていたら制作扱いだった」はよくあるトラブルの原因です。画面単位のUI変更、カスタム投稿タイプの新設、検索条件や計算ロジックの追加などは原則「制作」側です。迷ったらスクショと要件の粒度を書き出し、まずは保守業者に確認してから進めるとトラブルを防ぐことができます。

まとめ

保守代行は「壊さない・守る」ための定常運用がメインになります。更新・脆弱性対応・バックアップ・軽微改修は保守、機能追加や大規模改修は制作と考えるとスッキリします。

は外注前提で基本セットを固める、オレンジはハイブリッド運用、はSLAとRunbookで仕組み化が目安です。

契約時は「軽微改修の定義」「対象イベント」「初動時間」「バックアップ体制」を必ず文書化しておきましょう。ここさえ押さえれば、多くの齟齬や無駄コストを避けられます。

線引きが見えづらいときは、まずは現状診断、その後、保守業者へ連絡してみましょう。全くわからないような状況でしたら、早めに業者へ連絡しましょう。

この記事を書いた人
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桐山智行(株式会社H.T.P. 代表)

2007年よりWeb制作に従事し、現在は企業サイトやWordPressの保守・改善支援も行っています。これまで100社以上・500サイトを超える案件を担当し、トラブル対応から集客サポートまで幅広く経験しています。

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