WordPressを安全に長期運用するための定期チェックリスト

この記事はこんな人向けです
  • 長期運用を見据えて、なにをどの頻度で点検すべきかを整理したい
  • 更新やバックアップはしているけど、抜け漏れや優先順位に不安がある
  • 社内だけで回すか、どこまで外注するかの線引きを決めたい

WordPressレベル別 対応難易度

Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7
レベル判断は、右のレベル表(スマホは画面下)を参考にしてください。

赤:外注推奨 オレンジ:条件付き自力可 緑:自力対応可

WordPress長期運用の全体像と対応方針

定期運用のカギは「頻度×優先順位×記録」この3つを掛け合わせることです。まずは毎月タスクを軽量に回し、四半期ごとにセキュリティとパフォーマンスを棚卸し、年次で体制・コストを見直す流れが基本です。
「止めない」「戻せる」「見張る」の3本柱(アップデート/バックアップ/監視)を基準に、自社のスキル帯に合わせて外注ラインを決めていきましょう。

安全に長期運用 ~WordPressレベルごとのおすすめ対応

まずは「止めない・戻せる」を最優先

赤レベルの方は、更新作業でサイトを止めないことと、万一でもすぐ戻せることを徹底しましょう。技術的な深追いはNGです。以下を「毎月の定期運用」として外注と分担するのが現実的です。

  1. バックアップの仕組み確認(自動/世代/復元テスト):月1回は復元リハーサル。プラグイン任せにしないで、本当に戻るかを確認する。
  2. 更新は二段構え:ステージング(テスト環境)→本番の順。テーマ/プラグイン/コアの更新は、互換性変更履歴を外注側でチェックしてもらう。
  3. セキュリティの初期セット:強固なパスワード/2段階認証、ログイン試行制限、基本のWAF、編集機能OFF(必要なら)。
  4. 死活監視:ダウン監視/SSL期限/ドメイン期限のリマインド。落ちたら通知が来る状態にする。
  5. お問い合わせフォームの通し検証:月1回は実送信。SPF/DKIM/DMARCの設定は外注で快適化を実施する。

やらないほうがいいのは、本番直更新データベース直接操作です。トラブル時は記録(発生時間/直前操作/エラー表示/キャプチャ)だけ押さえて、外注にバトンパスするのが損しません。

四半期ごとに、プラグイン断捨離(未使用/重複機能を削除)と、画像最適化(遅延読み込み/サムネ再生成)も外注とセットで実施します。表示速度(Core Web Vitals)の赤信号だけ把握しておけばOKです。

チェックリストを「手順化」して回す

ある程度慣れているオレンジレベルの方なら、下記は自力で行えます。コツは「手順固定」「ロールバック前提」です。

  1. 月次:コア/テーマ/プラグイン更新(互換性メモ)、自動バックアップの世代確認、ログイン履歴/404多発/エラーログの軽いチェック。
  2. 四半期ユーザー権限の棚卸し(不要ユーザー削除/権限最小化)、プラグインの機能重複整理、reCAPTCHA/Turnstileの動作再確認。
  3. 半年:PHP/DB/ウェブサーバーの推奨バージョン確認、バックアップの復元ドリル(空き時間で必ず1回は実演)。
  4. 年次:テーマ方針(FSE対応/子テーマ運用)とカスタムコードの棚卸し、SLA/保守契約の見直し

やりがちミスは、更新の一括実行と、障害時の「推測削除」です。更新は依存関係を見て順番に(例:アドオン→親プラグイン→テーマ→コア)行いましょう。不具合時は必ずログを読んで切り分けていきましょう。(プラグイン停止→テーマ切替→キャッシュ無効→サーバーログ)

セキュリティは、2FA/ログインURL保護/REST API露出の最小化/ディレクトリ一覧禁止/ファイル改ざん検知の導入、これらを実装しましょう。ここから先(WAF細設定/脆弱性監査/侵入後のforensicsなど)は外注が効率的です。

SRE目線での定期メンテ計画:予防・観測・復旧の三層

緑レベルの方は「可観測性」と「変更容易性」を軸に、予防(Hardening)観測(Monitoring/Logging)復旧(Rollback/Restore)を仕組み化します。以下はチェックリストの例です。

  1. CI付きステージング:WP-CLIでマイグレーション/検索置換、配布テーマ差分のパッチ方針、Composer/Bedrock系なら依存の脆弱性チェックも。
  2. Blue/Green的更新運用:メンテナンス時間短縮、キャッシュ無効化の順序、DBスキーマ変更の後方互換。
  3. 監視:Uptime/応答時間/APM/エラーレート/DBクエリ遅延/Queue詰まり。閾値とエスカレーションルールを年次で更新。
  4. セキュリティ:最小権限(SFTP/DB/管理者)、キー・ソルト再生成、ヘッダー強化(CSP/Permissions-Policy/Referrer-Policy/STS)、サプライチェーン監査。
  5. バックアップ/復元RTO/RPOを定義。オブジェクトストレージのライフサイクル、暗号化、定期リストア演習を実施。
  6. パフォーマンス:Core Web Vitals/画像最適化/遅延読み込み/CDN/HTML最適化。四半期で実測・改善サイクル。

障害対応は「初動テンプレ」(誰が/なにを/どこに)と、事後のポストモーテム(再発防止タスクを定期運用へ編入)までがワンセット。ビジネス側のKPI(CV、問合せ、会員化)とリンクさせ、体験を落とさない運用を仕掛けましょう。

安全な長期運用を外注する場合のポイント

「工数は最小、でも安全に」を叶えるには、定期タスクの一部を外注に回すのが効きます。費用感・進め方・準備物はざっくり以下です。

項目ポイント
費用の目安 ・月次の更新/バックアップ点検:5,000~15,000円
・四半期のセキュリティ/速度棚卸し:20,000円~
・緊急復旧(当日)や深夜帯対応は割増になることが多い
依頼の流れ 1. 対象範囲と頻度を決める(毎月/四半期/年次)
2. 初回の現状診断レポートを受領(改善優先度の合意)
3. 定期運用の実施→月次要約/四半期詳細レポート→年次見直し
準備しておくと便利 ・ログイン/ホスティング情報(権限は必要最小限で発行)
・現在のバックアップ方法と保存先、復元可否の記録
・主要プラグイン/テーマ一覧と改変箇所メモ(子テーマの有無)
まとめ

定期運用は「毎月の軽作業」と「四半期の棚卸し」、そして「年次の見直し」に分けると続きます。
まずは止めない・戻せる・見張るを整え、次に権限とセキュリティ、最後に速度とUXを磨く順番が王道です。

は外注併用、オレンジは手順化でできるところまで自走、は仕組み化でリスク最小化が目安です。

記録に残すほど運用は楽になります。小さく始めて、少しずつチェックリストを自社仕様に育てていきましょう。

この記事を書いた人
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桐山智行(株式会社H.T.P. 代表)

2007年よりWeb制作に従事し、現在は企業サイトやWordPressの保守・改善支援も行っています。これまで100社以上・500サイトを超える案件を担当し、トラブル対応から集客サポートまで幅広く経験しています。

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