運用代行に任せるべき業務と自社でやるべき業務の違い
- 更新作業や保守の内製化に限界を感じ、どこから外注すべきか線引きしたい
- 運用代行の範囲・費用感・依頼方法を理解し、ムダなコストを避けたい
- チーム体制やスキルに合わせて、安心して任せられる運用フローを作りたい
WordPressレベル別 対応難易度
赤:外注推奨 オレンジ:条件付き自力可 緑:自力対応可
全体像と対応方針
「自社でやる」ほど速く安く見えますが、事故対応・技術検証・再発防止まで含めると逆転することも考えられます。
コア業務は内製、専門性と可用性が要る部分は外注、というハイブリッドが現実解です。
本記事ではレベル別に、任せる/任せないの判断基準と、現場での線引きを整理します。
運用代行に任せるべき業務と自社でやるべき業務 ~WordPressレベルごとのおすすめ対応
まずは“安全と継続性”の土台を丸ごと委託
日々の更新に自信がない・担当が不在になりがちという赤レベルの方では、トラブル時に止まらない体制を先に買ってしまうのが合理的です。可用性・保守性・セキュリティはプロに預け、社内は“内容づくり”に集中しましょう。
- 外注に任せたい領域:バックアップ設計/復元テスト、コア/プラグイン更新の検証と適用、脆弱性情報の監視、SSL/HTTPヘッダ/ファイアウォールの整備、障害一次対応
- 自社でやる領域:ニュース投稿・画像差し替え・固定ページの文言更新、問い合わせ対応、SNS連携の運用(操作手順は外注からレクチャーを受け標準化)
- 判断のものさし:操作ミスでサイト全体が落ちる可能性がある作業=外注、作業が記事単位で完結し巻き戻しが容易=内製
- 体制面のコツ:権限は“編集者”中心、管理者権限は最小限に限定。依頼窓口/対応時間/SLAを明確化し、簡易運用マニュアルを共有
このレベルは“触らない勇気”が時短になります。致命的な更新(テーマ編集、functions.php直書き、DB操作)は全面的に委託しましょう。
コンテンツ運用は社内、リスクの高い変更は外注
投稿・軽微なレイアウト調整・画像最適化などは社内で回せる一方、障害対応や仕様変更を伴う作業はコスト管理の観点からも外注がおすすめです。内製/外注の責任範囲マトリクスを作るとブレません。
- 内製に向く業務:記事作成、カテゴリ/タグ整理、アイキャッチ作成、簡易なメニュー編集、リダイレクトの運用(手順化済みの範囲)
- 外注に向く業務:テーマ子テーマの改修、プラグイン選定と導入、速度改善(キャッシュ/画像最適化/CLS対策)、フォームまわりのスパム対策、構造化データ設計、アクセシビリティ改善
- グレーゾーンの扱い:A/Bテストや計測タグの導入はCVへの影響が大きいので、検証環境で外注主導→手順化→一部内製化が安全
- 運用設計:月次で“変更申請→影響範囲→ロールバック手順”をテンプレ化。WAF/CDNなどインフラ系は外注が管理し、開閉の判断は合議制に
“できるからやる”ではなく、事故コスト>外注費の領域を見極めるのがポイントです。特に会員制/要フォーム/予約などビジネスの要となる機能は、改修から監視まで外注の守備範囲に入れると安定します。
高度内製+専門外注のハイブリッドでスピード最適化
社内にWeb担当(エンジニア/マーケ)がいて、Git/ステージング/レビューが回っているなら、開発~運用の大半を内製可能。とはいえ“常時モニタリング”と“突発対応の可用性”は外注に置くと盤石です。
- 内製中心:テーマ/プラグインのカスタマイズ、CIでの自動テスト、分析基盤の運用、LCP/INPなどコアウェブバイタル改善の継続チューニング
- 外注でレバレッジ:脆弱性監視と月次パッチ、ゼロデイ時の保護ルール投入、障害一次対応(24/365)、負荷試験、セキュリティ診断
- 役割分担:要件定義とプロトタイプは内製、サードパーティ連携やレガシー移行は外注の専門チームで短期決着
- 運用KPI:MTTR/変更失敗率/リリース頻度を定義し、四半期ごとに外注SLAと照合して改善を回す
“全部自社”は魅力的ですが、休暇・退職・障害の谷を埋めるのは難題。可用性保険としての運用代行を締結し、BCP観点で二重化しておくと経営的にも安心です。
外注する場合のポイント
“いつ・何を・どこまで”を先に決めると、費用も品質もブレません。
最初に守備範囲とSLAを言語化しておきましょう。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 費用の目安 |
・ライト運用(更新代行/バックアップ/軽微修正):月1.5~3万円 ・保守+改善(検証更新/速度・セキュリティ/小規模改修):月3~8万円 ・準委任(企画~開発~24/365一次対応):月10万円~(SLA/窓口人数で変動) |
| 依頼の流れ |
1. 現状ヒアリング(体制/課題/KPI/禁止事項)→範囲をRACIで定義 2. 試用期間で運用プロセス整備(チケット/承認/リリース/ロールバック) 3. 月次レビュー(成果/課題/改善案)→SLA見直し・範囲調整 |
| 準備しておくと便利 |
・権限設計(管理者は最小限、編集者中心、二要素認証) ・更新ポリシー(検証→本番の手順、禁止時間帯、緊急連絡) ・計測環境(GSC/GA/タグ管理のアクセス、目標設定) ・コンテンツ運用SOP(入稿?校閲?公開のチェックリスト) |
運用代行は「作業の外出し」ではなく、ビジネス継続のための可用性と専門性の補強。致命傷リスクのある変更や監視・復旧は任せ、価値創出のコア(内容・企画・意思決定)は社内に残すのが基本です。
赤は土台を委託、オレンジは責任範囲を明確化してハイブリッド、緑は高度内製+可用性保険という指針で線引きすると、費用対効果が安定します。
“何となく頼む/何となく自社”をやめ、範囲・SLA・KPIを言語化し、今日から無理なく回る運用へシフトしましょう。

